次世代型「レイヤー1」セルフチェーンの仕組みについて完全解説

こんにちは。今回初投稿となる暗号通貨セルフチェーン(SLF)について解説していきます。
セルフチェーン(SLF)とは、ブロックチェーンの生成と秘密鍵の管理において、MPC-TSSとAA(アカウント抽象化)を採用する事により、分散化とセキュリティ、スケーラブルな取引処理を実現したレイヤー1初の暗号通貨プラットフォームです。
参考:Self Chain
MPC-TSSとは
MPC-TSSとはブロックの生成において、各バリデータが協力して秘密鍵を生成しブロックへの「署名」を行う暗号技術を言います。

セルフチェーンでは秘密鍵は完全な形で存在せず、各バリデータが鍵の「断片」を持っています。各バリデータが”断片を持ち寄り”署名を行い、その署名を集めて最終署名となり、ブロックが生成されます。
鍵の断片が一つでも欠けると”最終署名”には至らないため強固なセキュリティを確保しています。
各バリデータの「断片」を組み合わせる事で署名が生成されるため、この過程において”秘密鍵”が他のバリデータに漏れることはありません。
また、複数の参加者が協力してハッシュ計算を行うため、処理速度が上がり単一障害も無くなります。
TSSについて
TSSでは特定の閾値(例えば5人中、3人が同意する等)を制御することで、バリデータの参加数を柔軟にコントロール出来ます。これにより秘密鍵の紛失時のセキュリティ確保に加え、秘密鍵復元への対応も柔軟に行えます。

上図ではA,B,Cに分割し、A,Bで復元します。kが2つなのでしきい値は2です。この場合はしきい値の分散情報が2つ残っていれば復元可能となります。
この場合は2-out-of-3となります。初めの説明に戻ると”閾値を柔軟に制御する”事が可能なので、例えば4-out-of-6にしたり、8-out-of-10にすることも可能。これは秘密鍵紛失への柔軟な対応のみじゃなく、セキュリティの強化にも繋がります。
スケーラビリティはどうか

図の古典的なブロックチェーンで説明すると、通常秘密鍵を生成し、秘密鍵から公開鍵を生成。そしてアドレスが生成されます。このやり方では速度が平常(遅く)となるため、スケーラブルな問題が指摘されやすいです。
また、単一障害が起きるとシステムの脆弱性があらわになってしまい、危険にさらされてしまいます。

セルフチェーンネットワークではどうかと言うと、初めに秘密鍵が各バリデータに分散されます。
その後各バリデータは断片を持ち寄り、協力してハッシュを計算し、アドレスの生成に至ります。
協力してハッシュを計算するため処理速度が向上し、また、単一障害も起きにくくなります。
参考:Threshold Signatures Explained | Binance Academy
AA(アカウント抽象化)とは
AA(アカント抽象化)とは、アカウントの具体化を対称的に表したものです。

通常トランザクションの際、AからBに送金するのにAとBは具体化されており、これが当たり前でした。AA(アカウント抽象化)では「本当にAさんとBさん?」といった具合に抽象化されています。図では赤の①と②が抽象化された部分で、実際のトランザクションの処理には黒の②,③,④,⑤が見えない所で行われます。
AA(アカント抽象化)はERC-4337の仕組みで、これはイーサリアム創業者のヴィタリック・ブテレン氏の、イーサリアム改善提案における長年の夢でありました。
引用:Mediumより、ヴィタリック・ブテレン氏のブログERC 4337: イーサリアムプロトコルの変更なしのアカウント抽象化 |by ヴィタリック・ブテリン |インフィニティズム |中程度
ERC-4337はStarknetやzkSyncなど、イーサリアムレイヤー2で内装されていますが、イーサリアムを初め、他のレイヤー1ではセルフチェーンが初の実装です。

ERC-4337がもたらすウォレットへの影響
前提知識としてイーサリアムの外部アカントとコントラクトアカウントについて知る必要があります。

アカントにはEOAとコントラクトアカントの2種類があり、EOAがいわゆる皆さんが普段使うウォレットのアドレスです。
トランザクションではEOAが起点となり、コントラクトアカントで署名や具体的な処理・検証等が行われます。
これには問題があり、言わずもがな秘密鍵を無くすと署名が起こせなくなってしまいます。また、盗難に遭うと誰かに勝手に署名されてしまいます。
これに対して、「ブロックチェーンにおける最大の危機であり、一刻も早くEOAウォレットから離れるべき」と唱える人もいます。EOAウォレットがブロックチェーンの未来にとって脅威である理由
イーサリアム改善提案によると、ERC-4337では秘密鍵に依存せず、スマートコントラクトを活用した柔軟で安全なアカウント管理を可能にすることで、従来の課題を一気に解決するとされています。
相互運用性
セルフチェーンでは、TMC-TSS/AAと、モジュラーインテント Accece Layer L1を組み合わせ、WEB3へのアクセスを簡素化しています。
モジュラーインテント Accece Layer L1とはセルフチェーンが開発した技術で、TMC-TSS/AAと組み合わせる事でマルチなWEB3アクセスを実現しました。

引用:Self Chain
図の様にセルフチェーンをWEB3の中心的位置づけとし、既存のWEB2サービスやDefi,DAppsへの価値提供、異なるブロックチェーンネットワークにおける異なる暗号通貨の交換(クロスチェーン)等、指数関数的な価値を提供しています。
まとめ
セルフチェーンはレイヤー1で初のMPC-TSSとAA(アカウント抽象化)を採用した暗号通貨である。
MPC-TSSでは秘密鍵の分散と各バリデータによる共同署名により強固なセキュリティを確立。鍵を分散しているため、紛失や盗難によるリスク回避を実現した。
しきい値を制御する事で、鍵の復元も柔軟に対応。セキュリティのさらなる向上にも寄与した。
分散・協力して署名を行う為、単一障害が起きにくく、処理速度を向上させた。
WEB3の中心的位置づけとなり、既存のWEB2サービスやDefi,DAppsへの価値提供、異なるブロックチェーンネットワークにおける異なる暗号通貨の交換(クロスチェーン)等、指数関数的な価値を提供している。
参考文献
Self Chain、ERC 4337: account abstraction without Ethereum protocol changes | by Vitalik Buterin | Infinitism | Medium、Account Abstraction(アカウント抽象化)とは?. Julien Nisetcurity: 元記事 | by bluesky-aozora | Medium
イーサリアムアカウント |ethereum.org、Account Abstraction(ERC4337)を、具体的な処理を追ってしっかりと理解してみましょう。、TSS :閾値署名の紹介 #Blockchain – Qiita、しきい値シグネチャの説明 |バイナンスアカデミー、「完全解説」イーサリアム(ETH)ロードマップとは – ansin-kasotsuka100xx.site